II. 依存関係

依存関係を明示的に宣言し分離する

ほとんどのプログラミング言語は、サポートライブラリを配布するためのパッケージ管理システムを提供している。例えば、PerlにおけるCPANやRubyにおけるRubygemsなどである。パッケージ管理システムでインストールされるライブラリは、システム全体(“site packages”と言われる)にインストールされる場合と、アプリケーションを含むディレクトリのスコープ(“vendoring”または“bundling”と言われる)にインストールされる場合がある。

Twelve-Factor Appは、システム全体にインストールされるパッケージが暗黙的に存在することに決して依存しない。 すべての依存関係を 依存関係宣言 マニフェストで完全かつ厳密に宣言する。さらに、実行時には 依存関係分離 ツールを使って、取り囲んでいるシステムから暗黙の依存関係が“漏れ出ない”ことを保証する。完全かつ明示的な依存関係の指定は、本番環境と開発環境の両方に対して同様に適用される。

例えば、Rubyで使われるBundler は、依存関係宣言のためのマニフェストのフォーマットであるGemfileと依存関係分離のためのbundle execを提供している。Pythonではこれらのステップで2つの別々のツールが使われる – Pipが宣言のために使われ、Virtualenvが分離のために使われる。C言語でもAutoconfで依存関係を宣言し、静的リンクで依存関係を分離することができる。ツールが何であれ、依存関係の宣言と分離は常に一緒に使わなければならない – どちらか片方だけではTwelve-Factorを満足するのに不十分である。

明示的に依存関係を宣言する利点の1つは、アプリケーションに新しい開発者が加わった際のセットアップを単純化できることである。新しい開発者は、言語のランタイムと依存関係管理ツールさえインストールされていれば、アプリケーションのコードベースを自分の開発マシンにチェックアウトすることができる。開発者は決められた ビルドコマンド で、アプリケーションのコードを実行するために必要なすべてのものをセットアップできる。例えば、Ruby/Bundlerのビルドコマンドはbundle installであり、Clojure/Leiningenではlein depsである。

また、Twelve-Factor Appは、いかなるシステムツールの暗黙的な存在にも依存しない。例として、アプリケーションからImageMagickやcurlを使う場合がある。これらのツールはほとんどのシステムに存在するだろうが、アプリケーションが将来に渡って実行され得るすべてのシステムに存在するかどうか、あるいは将来のシステムでこのアプリケーションと互換性のあるバージョンが見つかるかどうかについては何の保証もない。アプリケーションがシステムツールを必要とするならば、そのツールをアプリケーションに組み込むべきである。